ドラゴンの暴走により火星全土に大被害が及んでからおよそ1年。
ISDAでは停滞したままのタナトスへの監視を継続して行いつつ、身近な脅威として認識された個体ドラゴンへの対応を最優先課題とし、「エクスフォード・フォース」という新たな対策チームを設立しました。ISDAとしてはドラゴンによる危機の完全排除を掲げて再出発したことになるわけですが、その現状はどのようになっているのでしょうか? 本日は、現在の中核スタッフを招いてお話を伺っていこうと……。(敬称略)
「ジィィィン!! 見ているかァァァッ!? 俺はお前を必ず追い詰めてやるからな! お前は泣き喚き、這いつくばって俺に許しを請うんだ! ハッハッハ!!」
――ちょ、ちょっと何ですか? いきなり出てきて貴方は!?
「ふっ、誰かだって? 俺の名前はタチバナ・カズキだッ!!」
――タチバナ・カズキさん!? 以前にインタビューした時とは……その、ずいぶん雰囲気が変わられたようですが……。髪型とか、顔の真ん中にある不自然な眼帯とか……。
「俺もいろいろありましたからね……くくくっ……! それと、眼帯のことに今は触れないでくれ」
――はあ、失礼いたしました……。それにしても、タチバナさんは今回、ドラゴノーツの候補生からの大抜擢ということで、いやーすごいですね!
「はははっ! 実はサカキ司令がスカウトしてくれたんですよ! かつて目標としていた人たちを今では追い立てる立場になったわけですからね、くくくっ、心が痛みますよ!」
――心が痛むというわりには半笑いですが……。そうそう、今日はサカキ司令にもお話を伺う予定なんですよ! すみませーん、サカキ司令はまだこちらにいらっしゃっていませんかー!?
「……だけどねぇ、これは俺がやらなきゃいけない仕事なんですよ。他の誰でもない、この俺がね!! ……って、あんた人の話聞いてるのかよ!?」
「なんだね、君らは。まったく騒々しいな」
――あっ! ただいまスタジオにベイゼル・サカキ司令官が到着されました!
「インタビューだというからわざわざ出向いてみれば、私の出番はなさそうではないか」
――そんなことはありません! 司令にはぜひ、エクスフォード・フォースが設立された経緯や、現在の活動状況などについてお話ししていただけばと思います。
「俺の話はっ!?」
――大変恐縮ですが、しばらくの間ご遠慮していただけますか?
「ふん! まあ、いい。ジンを倒すチャンスはこれからいくらでもあるのだからな」
「もう気が済んだかな、カズキ?」
「はい! 申し訳ありませんでした!」
「では……コホン! 我々ISDAは、ドラゴンの脅威を完全に排除することを確約する。それが外宇宙から来たものであれ、地球のものであれ、必ずだ。たとえかつての部下と敵対することになろうとも、一瞬たりとも躊躇はしない。……これでいいか?」
――短っ! 勿体ぶったわりにあっという間に終わりましたね!?
「何か問題でも!?」
――問題といいますか、できればもうちょっと具体的に……。
「……わたしが……たおす……お父さんのために……」
――あれれ? お嬢ちゃん、どこからスタジオに入ってきたのかな?
「失礼だな、君は。我々エクスフォード・フォースの特務隊員に向かって」
――特務隊員? でも今、お父さんと聞こえましたが……?
「気のせいだろう。それに、これには年齢など関係ない」
――何をおっしゃっておられるんですか?
「こいつらは単なる道具にしか過ぎないってことだよ!」
――ああ、またタチバナさんが話をややこしく……。って、道具って何ですか!?
「そう、私はカズキのための道具。カズキの願いをかなえるために、カズキとともに生きてゆくの」
――また変な人が来た! でも、今度は随分とお綺麗な方ですけど、こちらのご婦人もエクスフォード・フォースの隊員でいらっしゃいますか?
「俺の、道具だ」
「私が……カズキのために……彼らを……倒す……」
「お前は余計なことを言うな!」
――えーと、これ以上この話題に突っ込んでいくと収拾がつかなくなりそうなので、最後にサカキ司令から今後の目標をお聞かせいただけますでしょうか?
「我々は、人類の脅威であるドラゴンを、そしてタナトスを殲滅する。……それだけだ」
「だから首を洗って待っていろよ、ジィィィン!!!!!!」
――あ、ありがとうございました……。そ、それでは次に、L3に停泊中のISDA特務艦「アヴニール」にも回線が繋がっておりますので、そちらの様子を……。



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